≪第9回OCDの会研修会・第10回市民フォーラム≫

●第10回市民フォーラム

『発達障害の臨床』            講師:服部 陵子先生
『不登校児・学校場面での行動療法』    講師:杉山 雅彦先生
『やさしくわかる強迫性障害と行動療法』  講師:原井 宏明先生

●開催日: 2013年10月26日(土) 17:40受付開始 18:00〜21:00(質疑応答含む)

●参加費:500円(要申込み)
●定 員:250名
●開催会場:くまもと県民交流館パレア10階ホール(熊本市中央区手取本町8番9号 テトリアくまもとビル)


●第9回OCDの会研修会

WS-1
「強迫性障害とその治療 〜認知行動療法を行うための基礎知識〜」
      講師:橋本加代先生/原井宏明先生  時間:9:30-12:30  定員:60名

 
強迫性障害の患者さんは、「これ以上不快な考えが浮かんでこないように」「これ以上不安にならないように」…と、日々精一杯努力をします。しかし、実は、この努力が、症状を持続させ、更には悪化させていくことになります。
回復し、本来の生活を取り戻すためには、適切な知識を身に着け、それを実践していく必要があります。研修会では、一人一人が自分の症状を正しく把握し、現状を変えるために具体的にどのような事を実践する必要があるのかを理解できるようになることを目標にお話ししたいと思います。


WS-2「動機づけ面接を日常に生かす〜励ますことは誰にできるか?」 
       講師:原井宏明先生  時間:13:30-16:30  定員:60名

OCDは基本的に現状維持の病です。今日が昨日と同じであるようにします。治ろうとする,変わろうとすること自体がOCDの患者本人にとっては嫌なことなのです。子どもや配偶者など,大切な人がOCDのままでいることを選んでいるように見えるとき,自分や周りが変わることを嫌がるとき,そして,行動療法という変わる方法の存在を知ったとき,家族の悩みは頂点に達します。
 どうすれば,大切な人を変えることができるだろうか?
励ましたり,脅したり,すかしたり,相手を変える手段はいろいろあるようです。一方,OCDに勝てるものはそうありません。これはどうだ!という言葉をかけても,行動療法をさせようとする狙いが相手に見透かされてしまいます。相手は一緒に生活を共にしていて,心を読むのに長けています。そして,どうやって今の状態を現状維持するかを毎日考えています。
 家族の願いをそう簡単には受け入れてはくれません。
それでも,変える手段はゼロではありません。どれだけ強迫が強くても,会話の中の揺らぎがあり,行動の変化があります。転居や入院,外出,訪問客などで環境が変われば,一時的でも行動が変わるでしょう。そうした変化を取り上げ,変わる方向にもっていくことができます。そして一緒に暮らす家族そのものも環境の1つと思えば,家族が変わることが,患者本人が変わるきっかけをつくることになります。
 この講演では,変わるきっかけを頑固な強迫の患者本人の言葉や行動の中から見つけるやり方,その練習方法をお話しします。



WS−3「認知行動療法を「使う」事−「いじめ」問題の分析とその改善を通して考える」

       講師:杉山雅彦先生  時間:9:30-12:30  定員:40名

認知行動療法とは一つのプログラムではありません。問題とその周囲を分析して、何が起こっているのかをまず把握しようとします。その上でその問題が続いてしまっている、または問題を続けてしまっている要因に関してアプローチします。認知行動療法の成果を上げるためには、この問題の分析と、問題のとらえ方が重要になります。ここではいじめ問題をとりあげ、その分析と改善のための介入そして効果を検討します。
いじめという問題は学校の教員にとっては「やっかい」なものです。暴力行為が伴うから、あるいはいじめられる側が追い詰められるからやっかいだというわけではありません。先生方にとっては最初は大したことはなく、しかも対応して改善されていったはずなのに、気がついてみると大事になっていたという事が少なくありません。いじめ問題でよく見られる「陰湿化」といわれる現象です。先生方にとっては何が起こっているのか良く分からない「やっかい」な問題なのです。いったい何が起こっているのかどうしてそういった状況になるのかを把握し、対応をしていくことが必要になります。当日はこういった問題の分析をもとに、実際のケースを例にとって認知行動療法をどう「使うか」に関して考えて行きたいと思います。

WS−4「マインドフルネストレーニングを用いたエクスポージャー療法」
       講師:岡嶋美代先生  時間:13:30-16:30  定員:40名

 エクスポージャー療法は行動療法の要ですが,大学院教育でも殆ど行われておらず,実践教育の場がないと聞きます。また,嫌なことをやらされることだという思い込みから,「行動療法は自分には無理だ」と思ってしまう患者さんがいますが,治療者の中にも「自分には合わない治療法だ」と思っている方も多いようです。最近は新世代の認知行動療法と言われるアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)によって,言語行動(思考も含む)に関する行動療法をうまく実施できる解説書も増えました。そんな認知行動療法のブームに乗りそこなった方や認知療法が強迫性障害に有害であることを知らない方まで,このWSを受講するとCBTの最前線を使えるようになるかもしれません。
 今回のメニューは,頭の中で行われるメンタル・チェッキングと呼ばれる強迫儀式を上手に妨害する方法と,基本的なエクスポージャー療法の実践過程のコツをお伝えします。エクスポージャー療法や儀式妨害の治療戦略は強迫性障害だけのものではありません。慢性化した不安障害には強迫性に対処する技術が必須ですし,すべての不安障害からうつ病にまで応用可能です。実際には,治療者自身のプチエクスポージャーを3時間の中で体験していただきながら,カウンセリングや診察中に簡単にできるエクスポージャーのアイデア作りもお話し致します。
<追加文>
 このWSは専門家向けということで案内しています。エクスポージャー療法の実際を体験したことがない,あるいはまだ用いることに自信がない治療者のためのものです。なるべく行動療法の専門用語を使わずにお伝えしていきますが,専門家向けであることをご理解いただいた上での,当事者の方やご家族の方のご参加も受け付けております。WSの中では隣の人と一緒に,エクスポージャー体験を治療者になった気分とクライエントになった気分で相互にやってもらいます。ネタは「自分の嫌いなものを想像すること」です。”意外と楽しいエクスポージャー体験”を皆さんとともにできますことを期待しています。


●開催日: 2013年10月27日(日)  9:00受付開始 9:30〜16:30(質疑応答含む)
●受講料: WS-1.2 3,000円 ・ WS-3.4 4,000円
●定 員: WS-1.2 60名 ・ WS-3.4 40名
●開催会場:市民会館崇城大学ホール(熊本市民会館)・会議室
(熊本市中央区桜町1番3号)


━━━ 熊本市民フォ―ラム・研修会報告 ━━━
◆OCDの会を初体験   (あかつき心理相談研究所 杉山 雅彦)
今回、二日間熊本に滞在した間に、何度、OCDの会の方から「行き届かなくてすみません」といわれただろう。正直、私自身一度も「行き届いていない」と感じたことはありませんでした。会場はきちんと準備され、 必要なものが必要なところに配置されていました。資料もきちんと準備されており、 時間配分などの条件も丁寧に説明をいただけました。 集中して研修に対応できる状況を整えていただいていました。何よりも研修会にご参加いただいた方々が積極的であったことが有り難かったと思っています。
研修会、ワークショップ共にご参加の方々集中していただけました。終了後質問などもいただき、短い間でしたが議論させていただくことも出来ました。気持ちのよい緊張感の中で話させていただくことが出来ました。ただ、私の時間配分が下手なために、御迷惑をおかけしてしまったことが心残りではありますが、 ご参加いただいた方々と真剣に研修に取り組むことが出来たと思っています。
 私を呼んでいただいたことが意味があったかどうかは、きっちり評価していただけたらと思います。私自身は気持ちよく集中できた二日間でした。今後も是非このような活動を続けていっていただけたらと思っています。
 

◆身体感覚に気づくこと  (なごやメンタルクリニック 岡嶋 美代)
 熊本では,同業者や懐かしい面々に出会うことができました。懐かしい感覚とは,胸がキューっとなることだと感じました。故郷でエクスポージャー療法の招待講演を行うことなど、菊池病院に行き始めた2005年には考えられないことでした。逆にいえば、私のように週1日1年間行動療法を陪席し続け、ケース検討会と学習心理学の勉強会に出続け、そのうちアセスメントをしてもらった患者さんの行動療法を任せてもらいつつ、スーパーバイズを受け、徐々に一人立ちしていく過程を見守ってもらうことで、2008年には独立した治療者となっていけたように、誰もがその程度の時間を費やせばいいのかもしれません。
 最近、私の狭いカウンセリングルームにも、陪席に来る方が増えました。陪席を受け入れながら,何かを伝えられているのかなとか,考えないわけでもないですが,とりあえずは目の前の患者さんのことを自分がどのように理解しどのように導けばいいのかということで頭がいっぱいです。それで誰かに見られているという緊張感などは全くありません。つまり,私の観察するポイントが患者さんへ集中しています。それでいて,集中している自分とその私へ集中してくれている患者さんとの二人の様子をどこからか眺めているもうひとりの自分を感じたりします。よく画家が時々手をとめて,キャンバスから少し離れて,描いた絵を眺めている時のような瞬間です。この注意の集中と拡散の繰り返しをしてバランスをとっていきます。
 このことはこだわりの治療にも応用できます。強迫の患者さんたちの集中力は凄まじいものがあります。ところがしばしば皆さんは「集中できないこと」を悩みとして訴えてこられます。それは,「98%の集中ではダメで,99%以上集中できてないと集中しているとは言えない」とでも言っているような集中の完璧度不足に悩んでいるためです。洗いの完璧度に苦しんでいる人は,1%も汚れが残っては一大事です。その1%だか,0.1%だかの正確性にこだわります。もちろん,そのおかげでいい仕事をしている職人さんもたくさんいらっしゃるのでこだわり力は大事なことでもあります。
 基本的な対応としては,知識や言葉で整理しないまま,完璧であろうとすることをやめ,数パーセントの集中力を欠いたまま,目前の作業をし続けてみます。集中しすぎた状態を緩めるためには,ネバネバした「ねばならない病」がまとわりついても,しつこく「放置あるのみ!」という訓練を積み重ねていきます。コツは,文字通りコツコツです。でも,最初の一つをこの方法で乗り切ると,因数分解が解けていくように対処法が見えてきます。
 ところで,実は私の講演を両親が末席の方で聞いてくれていました。「皆,無駄話もせんで,まじめに聞いとったねえ」と誰を褒めているのかわからない言葉でしたが,とても満足そうでした。胸がキューっとだけでなく,ふわっと温かいものも感じた熊本でした。


◆スタッフの感想
先日、毎年開催しているフォーラムと研修会が無事に終わりました。人が集まらないのではと心配しましたが、多くの方に参加して頂き、各地の世話人の方にも遠い熊本まで集まってもらい感謝しています。私は第1回のフォーラム以外スタッフとして参加しています。当時、患者がこんなに居るのに治療者が居なくて困っている現状打破と一般の人にも病気の事を知って欲しく、市民フォーラムでの啓発と研修会でより多くの治療者の育成を目指したのが始まりでした。
今では強迫性障害も昔より情報が多くなりましたが治療者はなかなか増えていないのが現実で、参加者の申し込みを増やすのも大変です。確かに1回や2回の研修会に参加してもいざ実践とはなかなかいかないと思いますが、興味を持ってもらえれば次に繋がると思っています。1回目を熊本でした後は、名古屋・大阪・東京・広島・横浜と、各地の世話人さん達と協力して開催してきました。毎年、参加者にも顔なじみが増え、世話人さんにも会えて懐かしく、いつも話が盛り上がります。いつも準備で、もう次はしたくない!!と思う位バタバタとなりどんなに準備をしても当日色んなトラブルが起きてしまいますが、皆さんと会えるのが楽しくて毎年頑張れる原動力になっています。今回帰る時に、各地の世話人さんと「また来年の研修会で会いましょう」と挨拶して別れました。そんな関係が続くように、私に出来る事は頑張りたいと思います。
最後に先生方、参加者、スタッフの皆さん、今年もありがとうございました。 (テン)


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