≪第1回OCDの会研修会・第2回市民フォーラム≫
【場 所】:熊本大学医学部基礎棟1階セミナー室(大阪市西区靭本町1丁目8−4)
【期 日】:平成18年2月10日(金)〜12日(日)
【研修会の特徴】
患者・家族の会による研修会などという初めての企画をした不慣れな私たちを熊本行動・認知療法勉強会と熊本ブリーフサイコセラピー・カンファレンスのスタッフの皆様が支えてくださって,研修内容を充実させることが出来ました。通常の研修会では経験できない私たち患者・家族の生の声を聞いていただきたいと思います。また,私たちの受けた治療の再現や私たちとの面接場面でのロールプレイを通して,強迫性障害をより深くご理解いただく機会になれば幸いです。
【日程】
日 | 開 始 | 終 了 | 講義タイトル | 講師など | テーマ |
2/10 | 12:00 | 13:00 | 受付 | ||
13:00 | 13:30 | オリエンテーション 自己紹介 | 人間ビンゴ・講師紹介 パンフレットの説明 |
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13:30 | 14:00 | 強迫性障害とは-患者の立場から- | 夏子さん・インタビュワー原井 | ”イメージ・エクスポージャーで不潔恐怖を克服した私” | |
14:00 | 14:30 | 強迫性障害とは-家族の立場から- | 冬美さん・秋彦さん インタビュワー原井 |
”赤いものを見ると病気恐怖になる夫を持った私” | |
14:30 | 15:00 | 強迫性障害に対する治療の あらまし |
原井宏明 | 全体の紹介 | |
15:00 | 16:00 | 治療の実際の場面 デモンストレーション |
原井宏明・お春さん | イメージ・エクスポージャーの説明-自分で経験し、実感する事 | |
16:00 | 17:30 | 行動療法の基本 | WilliamO'Donohue (ネバダ大学レノ校心理学教授) |
行動療法とは・行動療法の技法・アセスメントの基本 | |
17:30 | 18:00 | 症例検討会1 | 参加者全員 | 事前に参加者から募った症例について検討 | |
2/11 | 9:00 | 10:00 | 強迫性障害治療のエビデンス | 原井宏明 | レビュー・菊池病院のデータ |
10:00 | 11:30 | 強迫性障害の評価 | 岡嶋美代 | Y-BOCS評価訓練ビデオによるトレーニング | |
11:30 | 12:30 | 強迫性障害の治療計画 | 岡嶋美代・野口由香 | 動機づけ・強迫観念・回避行動のチェック | |
12:30 | 13:30 | 昼食 | ハエラキーの作成 | ||
13:30 | 14:30 | 不潔恐怖に対する エクスポージャーと儀式妨害 |
野口由香・お春さん | 汚らわしさ・おぞましさに対する回避と洗浄儀式に対する治療と動機づけ | |
14:30 | 15:30 | 薬物と精神科マネージメント 入院中のプログラム |
橋本加代 | 入院中の生活の問題 | |
15:30 | 16:30 | イメージエクスポージャー | 原井宏明・面接場面のテープ再生 | 未来の災禍に対する気がかりと確認儀式に対する治療と言語エクスポージャー(認知デフュージョン) | |
16:30 | 18:00 | 症例検討会2 | 講師全員 | 事前に参加者から募った症例について検討 | |
18:30 | 21:00 | 懇親会 | フェリシア | ||
2/12 | 9:00 | 10:30 | 動機づけ面接 -実際の患者との 面接場面を用いて- |
原井宏明 | 共感しながら恐ろしい強迫観念を述べるようにさせること |
10:30 | 12:00 | 症例検討会3 エクスポージャーの工夫-治療を始めて少し良いが いまひとつというときに |
講師全員 | 治療者は治療しているが患者は治療していないとき | |
12:00 | 13:00 | 昼食 | |||
13:00 | 14:00 | 行動療法の将来 | William O'Donohue | 第三世代の行動療法・他と情動障害との統合 | |
14:00 | 15:30 | 質疑応答・まとめ・修了証書授与 | 講師全員 |
第2回市民フォーラム『治療は誰のために』
日 時 | 平成18年2月12日(日曜日)16:00-17:30 |
場 所 | 熊本大学医学部総研3階セミナー室 |
内 容 | 1、『アメリカでのOCD治療の実情』 William O'Donohue |
2、パネルディスカッション William O'Donohue(ネバダ大学レノ校心理学教授) 原井 宏明(菊池病院臨床研究部長)) 大内 清(ハートフル心療内科院長) 神村 栄一(新潟大学教育人間科学部教授) OCD患者本人・OCD患者の家族 |
熊日との連絡ミスで広報が予定通り出来ず参加者は少ないのでは?と心配していましたが多数の参加者と10日から始まった研修会参加者の多くが残って頂き無事に終わることが出来ました。ありがとうございました。
今回のフォーラムは、海外の先生や開業医、心理士を育てる大学の先生、患者本人と家族とあらゆる角度からOCDの現状を聞くことが出来、とても勉強になったと共に厳しい現状を改めて思いました。
研修会が終了した後に引き続き第2回の市民フォーラムを開催いたしました。研修会の後ということで多くの研修会参加者
が参加してくださいました。熊日との連絡のミスで広報が予定どうりに出来ず参加者が少ないのでは?と心配しましたが多数ご参加頂き誠にありがとうございました。
今回の市民フォーラムでは海外の先生や開業医、そして研修会講師を務めていただいた先生、
本人や家族などをパネリストに迎え、あらゆる角度からのOCD の現状を聞くことができ、とても勉強になりました。その一方、まだまだOCDで悩む我々にとって厳しい現実があり、これからもOCDを皆様にもっと知ってもらい、今誰にも言えず悩んでいる人が居れば早く治療を始めるように勧め、医療関係者にはもっとOCDを知ってもらい治療をしてもらえる場所を広げていきたいと思いました。
【参加者の感想】
市民フォーラムに参加して、1番強く感じたのは、多くの患者がいるのに、専門治療する医師、病院の少なさ、治療は薬物療法と行動療法の併用が効果があるとされているのに強迫性障害に対応できる行動療法家(士)がほとんどいない、この現状をどうすればよいのか、ということです。確かに患者を抱え、家族は現実目の前のことに毎日心身共にすり減らし、共倒れ寸前綱渡りのような毎日を長年続けています。が、何より辛く苦しんでいるのは患者本人です。 でも病状が深刻で重いほど、通院もできない、動くことも薬を飲むこともできないのです。通院し治療を受けるにすら至れない多くの方がいるのです。10年前病名もつかず、病院医師探しに藁をも掴む思いで走りまわっていた私と同じ方が今もたくさんおられる。この現実をなんとかしたい、強迫性障害の適切な治療支援を住んでいる地域でしっかりと受けられるようにしていかなければいけないと強く思いました。これからの10年は今までよりも何倍も濃縮された、実のあるものに必ずしたい。諦めず、焦らずそして慌てずに。先生方のお話を聞いてそんなことを考えました。
開催して頂いた関係者の皆様、参加して下さった先生方ありがとうございました。 *** こころ ***
【スタッフの感想】
3日間はあっという間に終わりました。朝から夕方までをどう動機付けして行動療法をしていくのか、一言ももらさぬよう約40名の方が、真剣に受講されていました。
1日目、原井先生がいつものように早口で説明されるので、スライドやテキストに追いつかなくてテキストを何度か探しても今どこ?となる場面や、字が小さくて読むのが大変な所もあり、ページは続き番号か見出しの設定がはっきりしているほうがいいのかなと反省…でもとても中身の詰まったいいものに仕上がっていました。 オドノーヒュー先生のアメリカの現状についての話しも増田先生が通訳してくださって、一人に対する診察時間はとても短く菊池病院のように丁寧に診ていただけるのは幸せなのだと感じましたし、知識として学ぶために本やサイトの紹介などもありました。内容はやっぱり私たちには難しいと思いました。
2日目、岡嶋先生方はテキスト通りにゆっくり進み、家族側の私たちにもわかりやすくホッとしました。Y−BOCS評価もはじめは悩まれていたのが段々早く正確になってきて、みなさん最後は同じように評価されていました。
会員と実際にエクスポージャーと儀式妨害の場面など、患者である会員が自らの状態を把握し動機付けし「こうしなきゃ!あの時先生からこのように思いなさいと言われたのを思い出し、いつも立ち向かっている。」と言う発言にビックリしました。 OCDの患者の気持ち、医療現場での難しさ、家族ができること、そして失敗している事(そうさせている)のため、症状が悪化して巻き込まれていたな〜とわかり、OCDを知る事が大切だと思いました。
3日目、市民フォーラムは時間が短かったと言う印象です。もっと多くの方たちに参加してもらえるように工夫できることは何だろうと考えました。
毎日あった症例検討会では、実際に治療現場での様子ややり取りから医師やスタッフの問題点や葛藤などがわかり、うなずかれている場面がよく見られました。研修会に参加された方たちは、わからないことはわかるまで質問し、先生方もそれぞれきちんと答えてくださいました。それに、患者や家族はとにかくどんな質問に対しても、自分たちの気持ちを素直にわかりやすく研修の場でも発表できることにも驚きました。
これも毎月のOCDの会で仲間がいて分かり合える人といろんな話ができているからではないのかしらと改めて思いました。
今回、スタッフという形でこの研修会に参加できて、私たちは近くに治療できる病院がありOCDの会もあり恵まれている事に感謝しました。世話人の児玉さん高田さんが、菊池病院の先生方と一緒にこの研修会のためにいろんな面に気を配り、内容のすばらしい研修会だったと思います。
OCDの患者が日本全国にいて苦しんでいます。行動療法のできる病院や医師、看護師、心理士がこの中から一人でも増えてくれることを願いました。