≪第2回行動療法研修会・第3回市民フォーラム≫
【場 所】:名古屋国際センター (名古屋市中村区那古野一丁目47番1号)
【期 日】:平成19年3月17日(土)〜18日(日)
【研修会のプログラム】
3月17日 | 9:00 | 9:30 | 受付 | 講師予定者 | 内容 | アドバンスコース | |
9:30 | 10:00 | オリエンテーション 自己紹介 |
講師全員 | 講師紹介,パンフレットの説明 | |||
10:00 | 11:00 | 強迫性障害とは −患者の立場から− |
原井宏明 フォブリーズさん |
先延ばししていたエクスポージャーを自宅訪問で克服した私 | |||
11:00 | 12:15 | 強迫性障害に対する治療に対する治療と評価 | 原井宏明 | 全体の紹介 | |||
質問用紙回収 | |||||||
12:15 | 13:15 | 昼 食 | |||||
13:15 | 14:45 | 初診時評価と初期治療計画,Y-BOCS,合併診断 | 原井宏明 | Y-BOCS評価訓練ビデオによるトレーニングなど | 症例検討会1 | 岡嶋美代 野口由香 大森一郎 |
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14:45 | 16:15 | 相談対応とスクリ―ニング,アセスメント,心理教育,自記式スケール | 岡嶋美代 | 電話相談や手紙による対応 | 症例検討会2 | 原井宏明 | |
16:15 | 16:30 | 休 憩 | |||||
16:30 | 18:00 | 薬物療法と精神科マネージメント,ハームリダクション | 大森先生 | 症例検討会3 | 原井宏明 | ||
質問用紙回収 | |||||||
18:00 | 18:30 | Q&A | 講師全員 | ||||
19:00 | 21:00 | 懇親会 | |||||
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3月18日 | 開始 | 終了 | 講義タイトル | 講師など | テーマ | ||
9:00 | 10:30 | 治療の実際の場面デモンストレーション | 野口由香おはるさん原井宏明イメージのテープ再生 | ||||
10:30 | 11:30 | 条件性情動反応とその消去,行動の選択に関する学習理論,収集癖に対するエクスポージャーと儀式妨害 | 原井宏明 | Rascorla Wagnerモデル,行動経済学 | 症例検討4 | 岡嶋美代 | |
11:30 | 12:30 | 確認強迫に対するイメージエクスポージャー | 原井宏明 テンさん |
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12:30 | 13:30 | 昼 食 | |||||
13:30 | 14:30 | OCD治療の応用行動分析 −オペラントとしての強迫観念と儀式 |
原井宏明 奥田健次 |
共感しながら恐ろしい強迫観念を述べるようにさせること | |||
14:30 | 15:30 | 家族に対するアプローチと自宅訪問プログラム | 岡嶋美代 原井宏明 |
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15:30 | 16:00 | 行動・認知療法の概念と技法,将来 | 原井宏明 OCDの会 |
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16:00 | 16:30 | 質疑応答・まとめ,修了証書授与 | 講師全員 |
昨年、地元熊本で始めて開催した行動療法の勉強会に続き3月17日・18日2日間に渡り名古屋の国際センターにて第2回目を開催する事が出来ました。
最初は、OCDを診てくれる医者が少ないから、患者側からもっと多くの医療者に診て頂けるように勉強会を開こうとの考えから始まり今では、会の大きな行事となっています。患者の会の強みである患者本人が実際に参加出来るのは、アンケートを見ると凄い事なのだと改めて感じました。
先生方もいろんな学会などで勉強はされていると思いますが、未だに近くに治療してくれる場所がないのでどこかご存知ですか?との問い合わせが来ます。
これからも、多くの方が研修会に参加して頂き、未だ病気で苦しんでおられる患者を早く治療へと導いてくれる事を願って今後も続けていきたいと思っています。
フォーラムの終了前に、お1人のご婦人が怒った表情で会場から出てこられて、会場で配布したチラシを破りアンケートを回収箱に投げ入れて帰って行かれました。アンケートには「OCDの会→偽善者の会と名前を変えて下さい!!」とだけ書かれていました。余りの事で、呼び止める事も出来ずただただ見送る事しか出来ませんでした。
何故、あのように怒っておられるのか理由が分からず呆然としましたが、今考えると壇上で家族の方々が話している内容は、その方にとっては余りにも偽善的なお話しだと感じて帰られたのではないかと推測いたします。
しかし、あの壇上に立っていたのは、医師以外はみなさん、現在進行形もいらっしゃいますが、自分の家族がOCDで確認や儀式に強制させられ辛い思いをしてきた人ばかりです。だからこそ、話すすべてが実体験から得ているので嘘偽りのない言葉だと思います。その方に、私達のその想いが伝わらなかったのはとても残念です。
これからも出来る限り多くの人々に、OCDは治る病気で、どのようにしたら今の苦しみから抜け出れるのかを訴えていきたいと思います。
※※※ 研修会アンケートに対するコメント ※※※
OCD研修会に参加いただいた方からさまざまな感想を寄せていただきました。ありがとうございます。こうやって、誰かが別の視点から評価してくださることが、とてもありがたいです。治療でも、研修でも、あるいは人生そのものもこうした振り返り、フィードバックが必要です。これがなければ、かならずあらぬ方向にいってしまいます。戦争のように国家全体でそうやって間違った方向に進んでしまうこともあるぐらいです。
今回、頂いた感想はいろいろな思いを私に起こさせました。プログラムの責任者としてまた一番沢山しゃべった講師として私の思いを分かち合わせてください。
▼講師の力み
OCDや認知行動療法の講演を原井はあちこちでしてきています。こうした講演でのネガティブな評価の例は、1)すでに知っていることばかりだった。2)話術に引き込まれて面白かったけれど、何を新しく知ったのかは思い出せない。でした。一方、どこでも、患者さんとのやりとりのデモンストレーションや動機づけ面接の訓練ビデオでのOCD患者(橋本医師が演技)と私のやりとりは好評でした。ライブなデモンストレーションが好評だろうとは思っていました。しかし、デモだけでは研修会になりません。講義部分にも新味を出そう,2006年2月の1回目とは違うものを、と考えました。マロットの行動分析入門などを参考にしながら“認知行動理論”の次のものをとがんばりました。
終わった後の参加者の表情を見ると、“力一杯バットを振ったら,場外大ファールになった”という感じでした。でも、感想を読ませていただくと、“大はずれの大飛球に、ついていけなくても、感心はしてくれるのだ”と別の感慨をもちました。難しい、わからない話にも働きはあるものです。
▼早く自分の本をださなくちゃ
参考書が欲しいという声がありました。今秋には,Marchらが書いた子どものOCD治療マニュアルの本を岩崎学術出版から訳して出す予定です。これが次回は役立つでしょう。これは大人の治療にも使えるとても良い本です。Slow Mindful Repetition(SMR, 意識を傾注して行うゆっくりとした反復)はこの本からとってきたものです。あとは、私の本です。母の命日に書き上げた,という後書きだけ出来ていて、中身はまだ。SMRをしたら原稿書きの緩慢が治る、というエビデンスはないかしら?
▼世の中に,無駄なものはない
いろいろ私にとっては、他の動機づけ面接の研修会、また前回のOCD研修会と比べて、反省する点があるものでした。市民フォーラムはとくにそうです。そして感想を読ませていただき、”世の中に,無駄なものはない”ということわざを思い出しました。
▼“無くそう”とOCD
無駄を無くそう、というのは誰ででも考えることです。さらに拡げて病気の原因になる汚れを無くそう、災難のもとになるミスを無くそう、というのも普通です。この普通が極度になったものがOCDです。病気や災難を無くそう、という正常な目標のために始めた、汚れを無くす、ミスを無くす、という行動が、何年と繰り返すうちに、汚れとミスを無くすことだけに血道を上げている状態がOCDです。こうなったら病気や災難のことはどうでもよくなっています。いいえ、OCDという別の病気と災難に陥ってしまっていますね。
普通の私たちの生活で“何かを無くそう”というのはこれにとどまりません。感想の中に、“ホームレス発言は非常に不愉快だった。医療者としての姿勢態度に疑問を感じた。”というのがありました。“ホームレスに対する差別の原因になる発言を無くそう”という趣旨だと思います。ホームレスに対する差別を無くそう、という尊い目標のために始めた、“原因になる発言を無くす”という行動を、何年と繰り返すことになったら、どういうことになるか、このコラムを読まれた方は考えてみてください。 原井宏明
◎◎◎ フォーラムのパネリストを通して学んだ事 ◎◎◎
一言で言うと、緊張しました。正直に言うと緊張で何を話したのか覚えてはいませんが、素直な思いを思ったまま話したつもりです。パネリストとしての役割を十分に果たせたのかどうかわかりませんが、役割などではなくて、家族の気持ちを伝えることが私の目的でした。
今回のフォーラムでは、患者さんの方が多かったようですが、正直言うと、何を言ってよいのか考えてしまいました。OCDの会の時は、家族同士で話すので、お互いに同じ様な気持ちでいらっしゃる方が多いので、私の話を上手く伝えることが出来ていました。しかし、相手が患者さんであると思って“傷つけてはいけない”という思いが、私の中に浮かんだのも事実です。母に対して、何も考えずに言葉を投げていたにも関わらず、他の患者さんに対しては妙に気を使ってしまいました。気を使うと言っても、相手を思いやるとかではなくて、形だけの気遣いだった様な気がします。これは、相手の事を何も知らず、そして理解が出来ていなかったからであるものだと思います。
私と母は、親子です。母と一緒に過ごした時間は、他の同級生より少ないものであるとしても、母の事を理解できない事も、また知らないという事もありません。だから、母に対しては言葉を投げかける事が出来ていたのだと勝手に推測しています。
今回の事で、相手(患者さん)の事を知るという事は、大事な事であると思いました。また母に対しての思いも変わりました。
私は、今まで弱っている母の姿ばかりを見ていた為に、母に対してどこか強気な気持ちでいたのですが、母は本当に強くなったと思っています。弱っているのと弱いのは違いますものね。
どうしようもない暗い闇の中から自分の力で変わった母を尊敬します。
母は自分の力で変わりました。私の言葉は母にとってのきっかけではありません。私の中での、私からの精一杯のエールでした。母にきつい言葉を言った時の私は、「治れば良いな」とか「治って欲しい」などの願望を持っていませんでした。「必ず母なら治せる」という希望と信頼に満ちていました。(*^o^*)
途中半端なエールは送りたくなかったからです。患者さんの事を誰よりも理解し、信じなければならないのは、家族だと思います。本気でぶつかれば、相手も本気になると思います。家族も変わらなければいけないところもあると思います。
「必ず治る」と、家族が信じることで、患者も頑張れるのではないかと思います。
でも、患者である本人に「必ず治るから頑張ろう!」とか言っちゃたら、逆にプレッシャーですよね。だから心の中で信じていました。
今回のフォーラムに参加することが出来て本当に良かったです。
たくさんの人に気持ちを伝えることの難しさと大変さを学びました。また、一方的な立場で話しちゃったもので、逆に患者さんにプレッシャーをかけてしまったかも?とか少し思ったりしましたが、本当に良い経験をさせていただきました。ありがとうございました。 (まるこ)
※※ 2日間スタッフとして参加した会員の感想 ※※
フォーラム、研修会と会のお手伝いとして参加させてもらったのですが、フォーラムでは、家族の方の参加は勿論、患者本人の参加が多い事にビックリしました。中には普段は家にひきこもり気味で動けないけど名古屋で強迫性障害のフォーラムがあると聞いてやっとの思いで来ましたという人も。
それだけ追い詰められた生活をしていても、どうにかしたいという患者自身の強い気持ちが勇気ある行動へ繋がっているんだと思うと家族である私は応援せずにはいわれない思いでいっぱいでした。強迫性障害が病気だと言っても、一般の人にはまだまだ理解に乏しく、ややもすれば?「怠け者」や「わがまま」としか思えず、家族ですら対応に戸惑う病気です。
そういう病気の治療の為に、3月17日・18日の2日間の研修が始まり、大勢の先生方・心理士・看護師と色々な分野の方々の受講が始まり、強迫性障害の行動療法の薦め方、不安に対する治療、症例、動機づけ面接、ERP等の研修があり難しい内容でしたが、分かる部分もあり先生方の立場からの治療の進め方と家族としては何をすべきか、又はやってはいけない事など改めて再確認出来ました。
研修2日目は、実際の治療場面のデモンストレーションで洗浄強迫のERPに続き、確認強迫のERPでそれぞれ患者さん本人が出演され、受講している先生方も医療現場でどの様に時間をかけ、患者の気持ちをほぐしながら適切に対応していくにはどうしたら良いのかと真剣に受講しておられたようです。
3日間を終えて、この研修を受講された先生方の中から少しでも多くの治療者が増える事が、患者や家族が行き場を失わずに安心して治療を受ける事に繋がるのだと痛感しました。 (浦島草)