≪第10回OCDの会研修会・第11回市民フォーラム≫

●第11回市民フォーラム

日 時 :  2014年11月22日(土) 13:00受付 13:30〜16:30(質疑応答含む)
会 場 : 愛知県産業労働センター(ウインクあいち) 1001
参加費 : 無料    定 員 : 250名 
座 長 : 塩入俊樹先生(岐阜大学医学部附属病院精神神経科教授)

『摂食障害、特に青年期の症例について』  
鈴木 太先生(名古屋大学医学部附属病院親と子どもの心療科助教)

『強迫症とその仲間 体にこだわる・爪をむしる・収集・チックの診断と治療』  
原井 宏明先生 (なごやメンタルクリニック院長)



●第10回OCDの会研修会

WS-1
「青年期の摂食障害について」
      講師:鈴木太先生  時間:9:30-12:30  定員:60名

 青年期は、通常、12から18歳の時期を示している。この時期はヒトが小児から成人へと移行する時期であり、多くの青年は家族、友人、先輩や後輩、教師や指導者といった重要な他者との間で何らかの葛藤を生じる。一部の青年はその文脈において、精神障害を発症する。摂食障害はこの年代で好発する非精神病性精神障害の一つであり、DSM-5では、神経性食欲不振症、神経性過食症、回避・制限性食物摂取障害などの病型が定義されている。これらは互いに移行することがよく知られており、例えば、回避・制限性食物摂取障害で発症した青年が制限型の神経性食欲不振症、過食排出型の神経性食欲不振症、そして、神経性過食症へと移行していくといったことが臨床的に観察される。
 摂食障害、特に慢性化した患者の治療抵抗性はよく知られているが、治療をより早く開始して、入院行動療法などで体重を十分に回復させ、外来治療を粘り強く続けることは摂食障害の寛解を導くと考えられる。このワークショップでは、主に青年期に焦点を置いて、摂食障害のそれぞれの病型における疫学、症候学、経過、いくつかの治療技法の治療反応性を概観する。治療的な介入としては、演者が主に行ってきた行動療法的な志向性を有した臨床管理、そして、当院で摂食障害を対象とした研究が開始された対人関係療法について紹介する予定である。



WS-2「健康な生活を取り戻すための行動分析学の可能性」 
       講師:奥田健次先生  時間:9:30-12:30  定員:60名

 過去の本研修会にて、強迫性障害について行動分析学で用いられる「行動随伴性」の枠組みから悪化するメカニズム、改善するメカニズムを紹介した。「阻止の強化」による弊害として紹介し、その後、これは拙著で詳しく紹介している(『メリットの法則-行動分析学・実践編』集英社新書)。ちなみに、それまでの教科書では「阻止の強化」について解説したものは稀で、その弊害について解説した教科書は上記の『メリットの法則』が初めてである。
 今日に至るまで、こうした理論的分析は実践レベルで自在に利用できるようになってきた。同時に、ヒトを含めた動物が健康な生活を送るための行動随伴性の種類についても、今まで以上に明らかになってきている。これらの知識や技能については、医師ならびに心理
職や教師、当事者や保護者などが知っておくと大いに有益であるため、これまでの知見をいくつかの事例を取り上げつつ紹介する。
 さらに、健康な生活を阻害するような諸問題を「上書きするような方法」で、まったく新しい行動随伴性を設計していくことの有用性について紹介する予定である。



WS−3「家族のためのコミュニケーションスキル講座」

       講師:原井宏明先生  時間:13:30-16:30  定員:60名

 病気に苦しむ家族がいれば,その人に対してどうにかしてあげたい,と思うのは普通のことでしょう。人が苦しむさまを見るとき,その人を愛し子のように大切に思えば思うほど,その思いは強くなります。その人のためには己の命も差し出せるような献身的な慈愛と言えるでしょう。「私が生み育てた」「私が衣食住を与えている」「私がいなければこの人は生きていけない」と強く思えば思うほど,そこまでしてあげているのに「どうして私の思う通りにしないのか?」というような怒りのような気持ちが沸くようになります。親の愛は厳しさも伴います。
 でも,献身と厳しさがあれば,人が思うようになると思ったら,それは大間違いです。この二つは人を助けたいという動機としては良いものでしょう。しかし,やり方としては相手を逆の方向に向かわせてしまう困りものです。にもかかわらず,うまく行かないと分かっていても,家族はこのやり方を続けてしまいがちです。献身と厳しさは罠にもなるのです。
家族がこの罠から逃れ,大切な人が治療に向かっていくようにするためには四つのことが必要です。
1 献身と厳しさの罠に気づく 良いことをしているという自覚に騙されない
2 どれだけ病気が重くても,それも相手の自由意志の表れとして尊重する敬意と共感
3 相手の行動,言動の変化に注目し,変わるところを見逃さない注意深さ
4 相手の変化を促す戦略的な言い方,ポジティブな言葉づかいと聞き返し,開かれた質問
 動機づけ面接のDVDを利用しながら,あなたのコミュニケーションスタイルが変わり,あなたの大切な人が変わっていく見通しがつくところまでをこの講座でサポートします。

WS−4「エクスポージャーと儀式妨害、どっちが大事?−OCDを自分で治そう!−」
       岡嶋美代先生  時間:13:30-16:30  定員:60名

 強迫症と名前を替えた強迫性障害(OCD)ですが、どんなに名前が変わっても治療の仕方が変わるわけではありません。決め手となる治療はERP(エクスポージャーと儀式妨害)のままです。最近、本の影響かERPできますかという初診予約の電話がかかってきたりして喜んでいますが、「やさしくわかる強迫性障害」が出版される前にいつもお勧めしていた「OCDを自宅で治そう」という本があります。それにあやかって「OCDを自分で治そう!」が今回のテーマです。
さて、このE(エクスポージャー)とRP(儀式妨害)、どっちが大事か知っていますか。どちらかひとつだけでは、いまひとつ治らないからセットになっているのですが、あえてはずすとすればどっちなのでしょうか。これがわかると自分で治すコツをつかむことができます。昨年の研修会では、「あえてはずす」ではなく、「あえて足して」マインドフルネス儀式妨害というワークショップをしました。EとRPとマインドフルネス、どれかはずすとすれば、いったいどの順番でしょう?
 そんなマニアックなことを患者さんたちが知ってしまうと治療者は大変かもしれません。「自分のことは自分でしましょう。」と小学生は習いますが、病気に関しては、「医療機関に頼らずに自分で治そう」とは言われません。でも行動療法はそれを推奨します。癖になった行動を変えるには病院に行くときだけでなく、日々の活動の中に小さな変化を作っていくことが大切です。そんなちょっとしたコツをお伝えできればいいなと思っています。


日 時 : 2014年11月23日(日)  9:15受付 9:30〜16:30(質疑応答含む)
会 場 : 愛知県産業労働センター(ウインクあいち) 1106・1107
受講料 : 各講座 一般 4,000円 ・ 対人援助職 5,000円


講師紹介


鈴木 太
名古屋大学医学部附属病院親と子どもの心療科助教

1999年、大阪市立大学医学部卒業。2005年、大阪市立大学大学院医学研究科脳神経科学博士課程修了し、大阪市立総合医療センター精神神経科医員。2008年、大阪市立総合医療センター精神神経科/児童青年精神科医長。2009年1月より現職。精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医、日本行動療法学会会員。


奥田 健次
行動コーチングアカデミー代表/桜花学園大学大学院客員教授

1994年から訪問型心理相談業務を開始。2000年から大学助手,2005年から准教授,2012年大学院客員教授。法政大学大学院、早稲田大学、愛知大学などで教鞭をとる。2011年、西軽井沢にあった廃校を行動コーチングアカデミーとして再生し、2012年に開校。
1999年、内山記念賞(日本行動療法学会)受賞。2003年、日本教育実践学会研究奨励賞受賞。2008年、第4回日本行動分析学会学会賞(論文賞)受賞

原井 宏明
なごやメンタルクリニック院長・専門行動療法士 動機づけ面接トレーナー

1984年岐阜大学医学部卒業、ミシガン大学文学部に留学(文化人類学専攻)。1985年神戸大学医学部精神科で研修。1986年国立肥前療養所精神科医師。1998年国立菊池病院精神科医長。2001、2002年ハワイ大学精神科アルコール薬物部門留学。2003年国立菊池病院臨床研究部長。現職は医療法人和楽会なごやメンタルクリニック院長、精神保健指定医、日本行動療法学会認定専門行動療法士、動機づけ面接トレーナー

岡嶋 美代
なごやメンタルクリニック/千代田心療クリニック心理療法士・専門行動療法士

2004年熊本大学大学院医学研究科修士課程(医科学)卒業。2005年国立病院機構菊池病院臨床研究部心理療法士,現在まで同臨床研究部共同研究員。2008年より医)和楽会なごやメンタルクリニック,また2014年より千代田心療クリニックにも勤務。


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