※ 専門家のコラム(6) ※


「一長一短」      
           医)和楽会なごやメンタルクリニック/千代田心療クリニック
                                 岡嶋 美代


 新幹線に乗れば、名古屋から横浜は1時間20分、東京までは1時間40分です。私も高校時代、1時間半以上かけて通学していましたし、時間としては通勤圏内のような東京の千代田心療クリニックへ7月から週2日通っています。今回はこのクリニックの知られざる一面をご紹介したいと思います。
 このクリニックの院長・舟津雅文先生(精神科医)は、催眠の研修会で何度かお会いした先生というだけに、私を含めて一風変わったセラピストを雇っていらっしゃいます。「気律療法」という気を操って不安障害も治すという富樫昭夫先生や、ヒーリング整体の天野博先生や前世療法のセラピストなどです。クリニックの玄関には盛り塩がされていて、厄除けがなされています。科学だエビデンスだという認知行動療法とは対極にあるような、わかる人にはわかる世界とでも言うような不思議が満ちたクリニックです。
 私自身も行動療法がすべてだとは思いませんし、疲れ果てていると感じるときに、動きなさいとしか言わないような行動療法に嫌気が差したら少し違った味わいを試す方がいいだろうと思います。最近では覚えたばかりの自我状態療法を試してみたり、ご希望の方にはたっぷりと催眠療法を行ってみたり、条件反射制御法という強迫性障害の治療としては新しい試みに挑戦したりしています。
 余談ですが、条件反射制御法は薬物依存を治療する臨床からまとめられた方法ですが、さまざまな依存症や衝動制御に用いられており、強迫性障害にも効果をあげています。
 話を戻しますと、どんなに栄養があるからといって宇宙食のような食べ物だけを毎日食べなければいけないのでは、誰でも単調で飽きてしまいます。強迫性障害は単調を好む性質がありますが、それは自分の気になることだけです。それ以外へと注意を向ける対象を増やし、こだわりを治療するのが行動療法の基本原則であれば、ちょっと変わったセラピーを受け入れてみることは、治療が停滞しているときには何かきっかけになるかもしれません。正しいこと、役に立つこと、合理的なことなどにこだわるだけでは、実は強迫性障害を治すことから遠ざかってしまうかもしれないのです。行動療法とは、とてもテーラーメイド、つまりお一人お一人の患者さんに合った治療法を組み立てていくものです。行動療法がERP(エクスポージャーと儀式妨害)だけだと思っていはいけないし、たくさんの技法が他にもあります。治療が停滞しているときこそ、新しいものを試すチャンスでもあります。色々やってみると、自分がどんな頑張り方をするのが好きかということに気づけるでしょう。自分でやったという感覚がない催眠は嫌だという人もいますし、逆に頑張れないので他力本願な治療を好む人もいます。私だけでも色々な技法を使いますが、さまざまなニーズに合わせていろいろなセラピストを取り揃えているというクリニックです。
 舟津先生ご自身も診察時間は15分に1名の予約枠しかなく保険診療の中で心理療法をしようとなさっています。それだけに予約の時間が大幅に狂ってしまい、最後の方では2時間待ちになることもあるそうです。どんなものにも一長一短あるということですね。


ホームページが新しく出来ました。
http:// www.hearts-and-minds.net/

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