※ ワークショップ報告2 ※


    


●医療従事者の感想
 今回のテーマは、『精神薬の減らし方,睡眠薬なしで寝る方法』でした。行動療法の天敵は、ソラナックスやルボックスです。私自身、「なんで、こんなにエキスポージャーの効きがいいんだろう…」と思って、患者さんの話を聞くと事前にソラナックスを飲みましたと言われたことがあります。今まで、この問題について漠然とした理解でしたが、動物を使った行動薬理学の実験によって、薬のどんな作用が、この問題を引き起こしているのかについて学ぶことができました。かくいう私も、「エキスポージャーの効きが良くなる」と曖昧に捉え方をしていることを反省しました。正しくは、「エキスポージャーに挑戦しやすくなる」です。
 原井先生のワークショプに出ると、「実証的な研究に基づいて臨床をしている」とよく感じます。今回、学習性無力感とSSRIの関係、思考の反芻に対するSSRIの効果、マーブル・ベアリングの実験にみるSSRIの効果、シャトルボックス・タスクにおける抗精神病薬の回避条件付けの学習成立の抑制効果の話はとても面白く、薬の効果がよく分かるお話でした。この行動薬理学という視点はとても新鮮な視点でした。そして、とても簡単な言葉で人の行動特徴を説明されますが、その背景にはたくさんの学習心理学の実験結果を踏まえてお話になっていると感じます。
 「自分の臨床で結果を出している」という点も、いつも素晴らしいと思います。形だけの認知行動療法や、頭でっかちになってしまった認知行動療法によく出会います。そんな方の話や本を読むと、理屈はたくさん書いてありますが、治療が終了した際の状態(治療の転機)がありません。SSRIを止めると強迫がぶり返す、どのくらいぶり返すか?じゃあ、一体どうするのか?などの問題について書いてある本もなかなかありません。患者さんにとって、治った状態はどんな状態なのか?どう治っていくか?じゃあ、どうすればいいのか?ということを知ることはとても大切なことです。こんな話が出てくると、とても治療に希望がもてます。
 「薬を減らしたい」とは、どんな患者さんでも一度は思うことではないかと思います。しかし、「薬を飲んでいたほうが楽だから…」とついつい薬に頼りがちになり、薬は少しづつ増えていきます。薬の効果に対する誤解・過度の期待もあります。「睡眠薬なしで寝る方法」はとても、最小の労力で効果があります。これを知るだけで睡眠に対するこだわりがなくなった患者さんもたくさんおられます。
 患者さん自身が正しい知識を身につけ、自分の病気に対して、自分の力で治していくことはとても意味があることだと思います。先生のワークショップでは、聞き手に合わせて話す内容を変えてくださるので、とてもありがたく思っています。
 行動療法は、確かに大変な治療法かもしれません。しかし、行動療法をやり遂げた患者さんは、自分の人生を取り戻す以上のものを治療によって得ているような気がします。また、治療する側の身としても、しっかりとした知識と技術を身に付けていかなければならないと改めて感じるワークショップでした。 

              熊本大学医学部付属病院 精神神経科臨床心理士 矢野宏之


●家族の感想
6月のOCDの会ワークショップに続き、10月20日再び原井宏明先生を講師にお迎えしてワークショップが開催されました。原井先生は具体的に詳しくお話をされるので、先生の講座をいつも楽しみにしている一人です。今回は、精神薬についての講座ということで医療従事者の方も多く参加されていました。
 前半は、向精神薬について、ベンゾジアゼピン系の薬がどのような物なのか、抗不安薬と坑うつ薬の違いについてまた薬の服用量が増えていく経緯など、実際の薬名を挙げながら説明してくださいました。先生としては、専門知識がなくても分かりやすいようにとかなり噛み砕いて説明してくださったのですが、それでも専門的な用語や初めて耳にする薬の名前も多くあり私にはやはり難しく感じました。
 その中でも、ブドウ糖などのプラセボでも服用すれば症状の改善が見られ、その服用を止めれば再燃がおこることもあるなど薬の効果は心理的なものでも得られるという説明は興味深く感じました。
 後半では実際に現在精神薬を服用されている方の薬の種類、量を例に挙げ、重複して無駄になっている薬を止めたり、持続性のある薬を少量の服用にするなど『薬の多重債務』を整理して薬を減らす方法を教えていただきました。
また、本講座のもうひとつのテーマである『睡眠薬なしで寝る方法』は、私の息子が寝つきが悪く常々悩んでおりますので、実は一番楽しみにしていたテーマでした。その方法として、生活習慣を改善することによって自然に眠れるようにする方法や睡眠薬の正しい効果を教えていただき、とても勉強になりました。私自身は今のところ寝つきはよく睡眠薬のお世話になることはありませんが、その寝つきのよさを継続させるため、また健康のため、そして息子のスムーズな眠りのためにも二人で生活習慣に意識的に留意して生活していきたいと思います。   
                              (本田)



●アンケート結果

1.所属  患者…5名 家族…7名 医師…1名 心理士…2名 その他…4名(行政@、無記名B)

2.性別  男…6名   女…13名

3.年代  10代…1名  20代…2名  30代…2名  40代…7名  50代…7名

4.この研修会をどこで知りましたか?
会のHP…11名 チラシ…2名 知人・友人…1名 保健所など…2名 その他…1名(家族からの紹介)

5.使用した資料(プリント,スライド)は分かりやすかったですか?
分かりやすかった…15名 どちらともいえない…3名 分かりにくかった…0名 無記入…1名

6.講義内容はわかりやすかったですか?
分かりやすかった…15名 どちらともいえない…2名 分かりにくかった…1名 無記入…1名

7.講義内容は,あなたに役に立ちそうですか?
役に立つと思う…16名 どちらともいえない…2名 役に立たないと思う…0名 無記入…1名

8.どの部分が印象に残りましたか?
〈患 者〉
・薬について量や効果を具体的に説明して頂けた事。
・抗不安薬と抗うつ薬について、特に面白かったです。分かりやすくて良かったです。離脱症状について(対処方法も)詳しくお聞きしたかったです。(タイムオーバーで残念です)
〈家 族〉
・薬の効果の違いが良く分かりました。
・『出来ないこと』ばかりに気をつかわないで、出来るときにどうしてるか考えようと思いました。
〈医 師〉
・動物実験をまじえながらの薬の説明。(原井先生の演技含む)
〈心理士〉
・薬理を動物モデルで示してもらったところがとても面白かったです。
・頓服の使い方、考え方。実験・歴史や背景から教えて頂いた事。
〈行 政〉
・抗不安薬と抗うつ薬の違い。効果。
〈その他〉
・薬の説明と資料がとても参考になりました。

9.当会が行うワークショップにまた参加したいと思いますか?
参加したい…16名 どちらでもない…3名 参加しない…0名

10.今後どんなワークショップがあれば参加したいですか?
〈患 者〉
・体験談 
・OCDに限らず、ちょっと専門家向けの内容なら何でも良いです。
〈家 族〉
・強迫性障害の頭の中でのものについての行動療法。コツ。
〈心理士〉
・内部感覚エクスポージャーの例を見てみたいです。We exposure
〈その他〉
・(認知)行動療法。

11.その他,ご感想やご意見,ご要望をお書きください。
〈患者〉
・今日は、ありがとうございました。
〈医師〉
・お疲れさまでした。また、次回がある事を期待してます。



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